研医会通信  15号  2007.9.5
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このホームページでは、当館所蔵の古医書をご紹介いたします。

今回は『玉機微義』(1)です。

 

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玉機微義(1)

 


 室町時代の末期に所謂李朱医学が僧月湖(享徳2年、明に渡り銭塘と云う所に住み医を行った僧医)の影響を受けた田代三喜(足利学校で医を学び、後に明に渡り李東垣、朱丹漢の方術を月湖及び恒徳の孫に受け、凡そ12年間の留学の後帰国)によって導入され、それが曲直瀬道三(初代)等の努力もあってわが国に拡められたことについては、前掲『啓迪集』の処でふれたが、道三流医学の真髄を伝えるといわれる『啓迪集』の中には中国の古医書『八十一難経』をはじめ60余種が引用されていることも衆知のことである。道三は『啓迪集』を編集するに当って『玉機微義』を常に座右の書とし、その基本にしたという。これは道三が享禄4年(1531)田代三喜に遇い、『素問』や『玉機微義』の医論を学んだからであろうと思われる。

『玉機微義』は金・元医学の四大家(劉完素、張従正、李東垣、朱丹渓)の学を伝える私撰の医学全書であると云われているものであるが、元末明初の医家、徐用誠の著『医学折衷』を劉純(明。陳西咸寧の人、字、宗厚)が増添した治方の書であるともいえる。
 原著の内容は、中風、屡、傷風、痰飲、滞下、泄瀉、瘧、頭痛、頭眩、ガイ逆、痞満、吐酸、シ癘、風病、破傷風、損傷の17類に分けられていたものを、劉宗厚が33類を増して50巻50門にまとめた大著である。その門類目録を明、嘉靖9年(1530)序を掲げる刊本によって示すと次の通りである。

  巻1 中風   巻2 湊証   巻3 傷風
  巻4 痰飲   巻5 滞下   巻6 泄潟
  巻7   巻8 ガイ嗽   巻9
  巻10   巻11   巻12 湿
  巻13   巻14   巻15
  巻16 気證   巻17 血證   巻18 内傷
  巻19 虚損   巻20 積衆   巻21 消渇
  巻22 水気   巻23 脚気   巻24 諸疝
  巻25 反胃   巻26 脹満   巻27 喉痺
  巻28 淋閥   巻29 眼目   巻30 牙歯
  巻31 腰痛   巻32 腹痛   巻33 心痛
  巻34 頭痛   巻35 頭眩   巻36 ガイ逆
  巻37 溶満   巻38 吐酸   巻39 (やまいだれに至)
  巻40 癘風   巻41 風痛   巻42 破傷風
  巻43 損傷   巻44 廃疹   巻45 黄疸
  巻46 霍亂   巻47   巻48 :痺証
  巻49 :婦人   巻50 小児      

眼科についてはその第29巻に眼目門が設けられ、およそ次の様な内容につき記されている。

巻29 眼目門

  論目為血泳之宗  
  論目昏赤腫翳膜皆属於熱  
  論眼証分表裏治  
  論目疾宜出血最急  
  論内障外障  
  論瞳子散大  
  論倒睫赤爛  
  論目不能遠視為陰気不足  
  論目疾分三因  
  論倫鍼眼  
治風之剤  
    局方蜜蒙花散   三因キョウ活散    東垣明目細辛湯    機要四物龍胆湯   防風飲子
治熱之剤  
    局方洗心散   済生羊肝丸   東垣瀉熱黄連湯
治風熱之剤  
    局方明目流気飲   洗肝散   銭氏瀉青丸   東垣連翹飲子
治湿熱之剤  
    神キュウ丸 東垣龍膽飲子
理血之剤  
    局方明目地黄丸    簡易加減駐景丸   地芝丸
理気之剤  
    局方定志丸    済生桑白皮散
養陰之剤  
    東垣神効黄?湯    益気聴明湯    人参補胃湯
滋陰之剤  
    東垣連栢益陰丸    滋陰腎気丸
養陽滋陰之剤  
    局方菊晴丸    東垣滋陰地黄丸   補陽湯   沖和養胃湯
治障翳諸方  
    龍木論還晴丸   局方蝉花無比散   蝉花散   本事方羊肝丸    秘方撥雲退翳丸  
点洗諸方  
    局方湯泡散    三因立勝散    金露膏   宝鑑春雪膏    抜萃方 膽(この字、虫偏)光膏
灸雀目○(やまいだれに耳)眼法



 このように『玉機微義』は、その序に『凡五十巻門分類集於論病因證治条理粲然既詳備云々』と述べられている如く、疾病を分類し、病因を論じ、治法をのべ、それに用いる薬剤を挙げている。また、その所説はその引用されている医書、中国古代の医書『内経』から宋、金、元代に至る諸書の医説であり、眼科においても目と五臓六腑との関係、五輪八廓説を基本に述べられている。

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図1 『玉機微義』巻29 眼目門 明版、嘉靖9年(1530)序刊

 

図2 『玉機微義』巻29眼目門、慶長古活字版

 

 

図3 明・嘉靖9年版 外装表紙に書かれた題箋と署名


 

 

 

図4 明版嘉靖9年(1530)序刊の表紙、蓋静翁道三詳閲と各冊に認められている。

 

(1980年4月 中泉、中泉、齋藤)

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