研医会通信  31号 2008.12.5

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このホームページでは、当館所蔵の古医書をご紹介いたします。

今回は『格致餘論(2)』です。

財団法人研医会図書館 利用案内

研医会図書館は近現代の眼科医書と東洋医学の古医書を所蔵する図書館です。

所在地: 中央区銀座 5−3−8
交通: 東京メトロ銀座駅 徒歩5分 ソニー通り
開館時間: 9:00〜5:00
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  格致餘論(2)
    本書はこの様にわが国安土桃山時代における李朱医学の先鋒をなしたものであり、その流布本も数種をかぞえ、また、難解な哲学的医論のため、本書の鈔本や諺解書等もいろいろあり、江戸時代に至って諸版が出された。現存するそれら主なものを挙げると、まず「格致餘論」の慶長から寛永年間にわたる、いわゆる古活字版無刊記本4種、(図書寮蔵1種、安田文庫蔵3種)を始め、以下のものがある。

1)小汀文庫本(慶長・元和版)。
2)大阪府立図書館本(元和版)。
3)久原文庫本(元和頃の印行)。
4)天理図書館本(元和頃の印行?)
「格致餘論鈔」陽明文庫蔵4巻4冊、寛永3年、梅寿刊行
 (以上川瀬一馬著「増補古活字版の研究」より)

「格致餘論」、東垣十書(元李『格致餘論』、東垣十書(元李杲撰 王好古編、明、正徳3刊<熊氏梅隠書堂>)の内、第7冊。
同東垣十書(元李杲撰 明、嘉靖8序刊<梅南書屋>)の内、第8冊。
同東垣十書(元李果撰 江戸刊の内)、第7冊。
同古今医統正脈全書(明、呉勉学編、明、万暦29序刊)の内、第39冊。
同古今医統正脈全書(明、王肯堂編、呉勉学校、明、刊)の内、第3冊。(以上内閣文庫目録より)
同寛永18(1641)刊。
同慶安元(1648)刊。
同慶安2(1649)刊。
同元禄2(1689)刊 芳野屋徳兵衛開板。
同元禄5(1692)刊 秋田屋清兵衛開板、全文振仮名付。
同寛文5(1665)刊 村上勘兵衛新刊。
同寛文9(1669)刊。
同延宝9(1681)刊 橋本屋長兵衛開板。
同東垣十書(王宇泰訂正、呉勉学校、映旭斎蔵版、 歩月楼梓刊)の内。
同東垣十書(李杲撰、梅南書屋、江戸刊)の内。
同東坦十書(李杲撰、山本長兵衛開板、明暦3(1657)刊の内。

「格致餘論鈔」寛永13(1636)刊、冊5。
同寛永21(1644)刊、敦賀屋久兵衛開板、冊2。

「格致餘論疏鈔」広田玄伯編集、延宝7(1679)刊、西村市郎右衛門梓行。冊9。

「格致餘論諺解」岡本為竹(一抱子)撰、元禄9(1696)刊、西村市郎右衛門開板、全7巻冊5。
本書はこの様に「内経素問霊枢」を始め張仲景や李東垣らの医論をもとに朱丹渓によって中国、元代に撰述された医書で、わが国安土桃山時代以降の道三流医学を支える李朱医学を知る貴重な文献の一つである。

李朱: 姓ハ朱氏、 諄ハ震亨、 字ハ彦修、 通称丹渓、先祖ハ漢ノ槐里ノ令雲が後、 父ハ郷貢進士環、諱ハ元、 至元18年辛己(1281)―日本弘安4年、 弘安ノ役の年―11月28日生、 至正18年戊戊(1358)6月24日卒、78歳( 享年) 丹渓壮令(30歳頃)、時、 母ノ脾疼ヲ病ムヲ以テ頗ル医ヲ習フ、 著書、「宋論」「格致餘論」「局方発揮」「傷寒論弁」「外科精要発揮」「本草衍義補遺」「風水間答」等


主な参考文献
1) 富士川涯:日本医学史.1943.
2)石原 明:日本の医学.1959.日新書院、東京、至文堂、 東京、
3)矢数道明:わが国李朱医学の開祖田代三喜小伝.医学選粋、25号、 日本医学文化保存会、東京、1981.
4)長澤規矩也:大東急記念文庫貴重書解題.第1巻、漢籍76.大東急記念文庫、東京、1956.
5)川瀬一馬:増補古活字版の研究.331、333、335、 758、 The Antiquarian Booksellers Association of Japan、Tokyo、1967.
6)大矢全節:和漢癌史料 日本医史学雑誌、 5巻4号、234。日本医史学会、東京、1955.
7)中野操:癌という漢字について。日本医史学会雑誌、13:(2)、59、 日本医史学会.東京、1967.
8)鈴木宜民:ススルータおょび李東垣の男女生み分け法一一色覚異常の遺伝に思う一一日本医事新報、No.2969、59、 日本医事新報社、東京、1981.

 

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図6 『格致餘論』 目録と巻頭、元禄5年(1692) 秋田屋清兵衛開板 全文振り仮名付き
 
 
   
図7 『格致餘論鈔』 寛永21年(1644)敦賀屋久兵衛開板 表紙と刊記



 
図8 『格致餘論疏鈔』 目録および巻頭 延宝7年(1679) 西村市郎右衛門梓行

 

 

 
 
図9 『格致餘論諺解』 扉および序文 元禄9年(1696) 西村市郎右衛門梓行

 

 

(1981年 7月 中泉、中泉、齋藤)

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