研医会図書館は近現代の眼科医書と東洋医学の古医書を所蔵する図書館です。

この研医会通信では、当館所蔵の古医書をご紹介いたします。

今回は 『傳氏眼科審視瑤函』 (1) です。

 『傳氏眼科審視瑤函』 (1) 

 

 “瑶"は「玉」「美なる玉」という意味があるが、中国には“眼"のことを金珠、玉液、幽戸、神門、瑶函などと表わす文字がある。古来、日本では眼科のことを表わす語として“銀海"という文字があるが、その語源は中国(宋代)の詩人蘇東坡(1036~1101)の詩


雪後書北菫壁
城頭初日始飜鴉
陥上晴泥己没車
凍合玉樓寒起粟
光揺銀海眩生花


によったもので、道家の説によって、「両肩を以て玉棲となし、眼を以て銀海となす」に拠ったもの、要するに銀海とは眼を文学的に表現した語で、眼科学の代表語ではなかったといわれている。

本書は秼陵の人、傳仁宇の纂輯したものを傳国棟が甥の張文凱とともに増補改訂し、諸名家の方書を検討し、上は軒岐に遡り、中は李東垣、朱丹漢、張長沙、劉河間の四大名家の書にインド医書の反訳したものを参考にし、博く古今の碩論を綜へ年を費すこと8にして編次の功を終え、父傳仁宇に示して『審視瑶函』の称を得、一家の秘書として剞○(=がんだれに渕のつくり)氏に命じて明の崇禎17年(1644)に刊行した(小川剣三郎著『稿本日本眼科小史』)。

 本書は全6巻よりなり、 1、2巻に線論、、 3~ 6巻は各種目疾を論じたもので、明未清初刊本により内容目次を挙げると以下の通りである。

『傳氏眼科審視瑶函』總目

禮集 巻之一
凡例十一条、前賢医案、五臓所司兼五行所属、動功六字延壽訳、太極陰陽動静致致痛例、五輪定位之図、八廓定位之図、五輪歌括、五臓主病、八廓歌括、八廓主病 臓腑表裏三陰三陽輪廓貫通、五運之図、六気之図、遂年六気總論、巳上倶載首冊、五輪所属論、八廓所属論、五輪不可忽論、勿以八廓馬無用論、 自爲至宝論、開導之後宜補論、眼不医必瞎辨論、點服之薬各有不同問答論、用片得効後宜少用勿用論、鈎割針烙宜戒慎論、棄邪歸正論 用薬寒熱論、用薬生熟各宜論、識病辨症詳明全玉賦。

楽集 巻之二
目病有三因、診親、目不専重診詠説、 目症相同所治用薬不同併戒慎問答、君臣佐使逆従反正説、原機症治十八條、経験湯剤丸散四十六方 症方備録楽巻首。
射集 巻之三
運気原證、 目痛、寒熱、頭痛、眉骨痛、 目赤、白痛、目癢、腫脹、外障、 目病三十八症、経験湯剤丸散七十七方 症方備録射巻首。

御集 巻之四
運気原證、 目瘍、目廃、漏晴、脾病、妊娠、痘疹、○(=やまいだれに班)疹、疳傷、驚搐、 目閉不開、○(=目へんに「日」の下に「月」)目直視、 目直視、 目剳、目病二十三症、経験湯剤丸散六十八方 症幷備録御巻首。

書集 巻之五
運気原證、目昏、妄見、内障、内障根源歌、鍼内障眼法歌、鍼内障後法歌、附太玄真人進還晴丸表、金鍼辨義、煮鍼法、用水法、○(=てへんに発)内障手法、開鍼三光符咒、封鍼符、封眼法、開内障図、推逐日接時人神所在当忌、目病三十四症、経験湯剤丸散七十二方 目症方備録書巻首。

数集 巻之六
運気原證、目涙、風沿、諸因、目病十三症、経験湯剤丸散四十六方、眼科鍼灸治目之要穴形図、鍼灸避人神論、取十二健人神之忌時、附前賢治目医案補遺諸方計十八方、點眼薬法、秘製點眼丹薬諸方 計八方、敷眼諸薬方 計四方、洗眼薬 計二方、治眼吹薬 計五方、定痛薬 計二方。

 

 

 

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  図1  傳氏眼科審覗瑶函(眼科大全)扉 酉酉堂蔵板  

 

 

   
  図2  傳氏眼科審視瑤函(眼科大全)扉 煥文堂蔵板  

 

 

   
  図3 図1同書所載 鍼灸治目要穴図の内  


 

   
  図4 傳氏審視瑤函(重訂眼科大全)扉。金閶巽記蔵板  

 


 

                                                      1987年12月 (中泉・中泉・齋藤)