本書の眼病分類は五輪八廓説の病理を基に外傷によるもの、熱病後の病、出疹病後の病、栄養不足による病等を加えて、原因により分類を行い、およそ18症を挙げ、さらにこれを症候により 108 の眼病に分けて掲げている。本書の巻3 (38 症)、巻4 (23 症 、巻5 (34症 、巻6 ( 13 症)に所載されている。しかしこの分類の方法はあまり用いられなかったようである。わが国では『眼科全書』哀学淵 著) に用いられた臨床病像、疾病発生部の解剖学的差異による 72 症(内障 24 症、 外障 48 症)分類が眼科諸流派の聞でも用いられたようである。
本書には五輪定位之図 、八廓定位之図、眼科鍼灸治目之要穴形図 (13 図)等が所載されているが、『校正増図 眼科大全』 ―傳氏審視稽画―(上海、文明書局発行)には西医の眼科図説が挿入され 、その第l図から第19 図までと洗眼器、蒸眼器、浴眼器、烙鉄等各施用図および鍼刺内翳図は本庄普一著『続眼科錦嚢』(天保8 年刊)に所載の図と全く同じであるが、この図は 『続眼科錦嚢』から引用したものか、他の西洋眼科書から用いられたものか、また、本書に西医の眼科図説を附加している理由も明らかでない。
本書には中国(明、清代) 版の他、日本におけるその写本数種がみられ、例えば、天保10 年(1839) 尾州、馬島明眼院学舎において、中村完三が校する精写本(天保戊成之春、紀陽、小河滄洲写 『眼科大全』 経国堂蔵板) などがあり、本書が写本にても広く読まれていたことがうかがえる。今日、伝えられている本書の刊本の種類には次の数種の版などがみられる 。
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傳氏眼科審視瑤函(眼科大全) 6 巻6冊、酉酉堂蔵板、明末清初刊
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傳氏眼科審視瑤函(眼科大全) 6 巻、明 傳仁字 撰、傳国棟 編、醉畊堂、清刊
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傳氏眼科審視瑤函(眼科大全) 6 巻6冊、傳仁字 纂輯、林長生 較補 、煥文堂蔵板
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傳氏眼科審視瑤函 清板重訂
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重訂眼科大全 金閶巽記蔵板、清刊
傳氏審視瑤函、附彩色眼球全図、附眼科捷径、 〔校正増図眼科大全、校正審視瑤函〕 6巻
傳仁字 纂輯 、張文凱 参閲、 林長生 較補、傳国棟 編集 張秀徴 訂正、
公猷掄・体仁○ 令校 周靖公 較梓 上海進歩書局印行
主な参考文献
傳仁字 纂輯 傳国棟 編集: | 傳氏眼科審視瑤函(眼科大全). 酉酉堂蔵板、明末清初刊 | |
本庄普一: | 続眼科錦嚢. 天保8年刊 | |
小川剣三郎: | 稿本 日本眼科小史. 9 . 吐鳳堂、東京、1904 | |
富士川 游: | 日本医学史. 140、日新書院、東京、1943 | |
福島義一 : | 日本眼科全書 1. 日本眼科史. 26、金原出版、東京、1954 | |
山賀 勇 : | 銀海の弁. 臨眼5 : 200、 1957 | |
遊 侠子 : | 銀海と杏林. 臨眼5 : 200、 1957 | |
中泉行正 : | 明治前日本医学史4. 日本眼科史. 329、日本学士院編、東京、1964 |
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図5 傳氏眼科審覗瑶函(校正増図 眼科大全) 表紙 |
図6 図5同書所載の図説 『続眼科錦嚢』所載図と同じ |
図7 図5同書所載 鍼灸治目要穴図の内 |
図8 傳氏審視瑤函(眼科大全)扉 天保9年(1838)小河滄州 写 |
1988年1月 (中泉・中泉・齋藤)