研医会通信  168号 

 2019.4.16
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研医会図書館は近現代の眼科医書と東洋医学の古医書を所蔵する図書館です。
この研医会通信では、当館所蔵の古医書をご紹介いたします。

今回は 『麻嶋潅頂小鏡一紙』 です。

『麻嶋潅頂小鏡一紙』

 

麻嶋流眼科の治療法は仏法僧の鳴き声で有名な、三河国宝来寺(愛知県南設楽郡鳳来町。真言宗、鳳来寺。大宝3年利修仙人開創と伝えられる)の薬師如来(峯薬師。日本三薬師のひとつ)の霊告によって伝授されたと記されている(「麻嶋灌頂小鏡之書」「麻嶋灌頂小鏡眼病口傳書」)のが一般的であるが、その後の伝援の系統も一様ではないように思われる。本書は紫野、大督寺(京都紫野大徳寺町。臨済宗大徳寺派の本山。大澄国師妙超開山。1319年、赤松則村開基)より伝授された秘方といわれるが、その内容を略述する。

 

本書はおよそ80葉、全1冊(四周双辺、毎半葉10行、木版用箋、24.0× 15.7cm)ょりなり、漢字、片仮名混りの和文にて精写されたものであるが、その内容は他の「麻嶋灌頂小鏡之巻」とは趣を異にしている。さて、本書の内容であるが、 まず記述項目を挙げると、

 

麻嶋灌頂小鏡一紙序

目傳秘方系図

目録

眼目療治之論

針治之事

 

となっていて、内容目録をさらに抄記すると、以下のような細目が示されている。

 

目録

《巻之上》外障門

外障、病目、陽永膜、弩肉、珎観膜、痘瘡目、唐痘眼、 目草ビラ、接目、拳毛倒睫、簾膜、羽翳膜、爛目、打目、切疵、血之道、頭痛、風眼

 

《巻之中》中障門

中障、中風(風毒眼)、藤膜、虫膜、峯雲膜、月輪、岩灵、 フト膜、 トチ膜、縛膜、草膜、 白膜筋、 目積膜、 目草ビラ、 目蛭

 

《巻野下》内障門 附諸目

青内障、黄内障、白内障、赤内障、黒内障、石内障、測内障、倍内障、鬼内障、老内障、丁目、小児疳目、鳥目、虚眼、老眼、黒目、爛

内障二針ヲ立ル次第

萬目下之方并諸方雑記

薬種能毒論

代薬之事

 

これら目録の項目からもわかるように、外障門、中障門、内障門の各門にはそれぞれ療治の次第、調合の部を掲げ、治療と薬の調合をわかりやすく述べ、また、巻之下の内障門には、内障の種類など、他の「麻嶋灌頂小鏡書」などに示されている7種類に加えて、測内障、倍内障、鬼内障、老内障など、その種類も多く挙げられている点が特徴的である。

 

このように本書の内容は他の「麻嶋灌頂小鏡之巻」とは異なっているが、本書に掲げられた、享保19年(1734)の末松道宦(「高祖末松氏尾州織田信長公之臣下也」)による序文の中には「……予家所傳見目傳秘法記極変化治方實神仙之妙術也云々……」とあり、天竺(唐)霊鷲山相伝の神仙の妙術であることが推察される。また、 この序文に続く“目傳秘法系図"には「大日本 平安 紫野 大督寺―江州高嶋郡之内新庄多朝甚兵衛入道授之即麻嶋入道浄安也―其後―神餘入道巨清授之―其後―秀悦授之―其後―金子孫太郎殿授之―其後―尾州大君尾張大納言様 此即予家眼療秘密之系図也」

このように系図が所載され、 目伝秘方の伝授の系統が窺える。

 

つまり、本書は、紫野大督寺より江州高嶋郡之内新庄(滋賀県高島郡新旭町新庄?)の麻嶋入道浄安他数人の相伝者を経て尾張大納言へ伝授された麻嶋灌頂小鏡書の一種と思われる。

なお、本書と「眼科玉明秘録」との関連については、臨床眼科36巻10号1308~1309頁および36巻11号1416~1417頁を参照されたい。

 

■ 主な参考文献■

小川剣三郎: 稿本日本眼科小史 49、吐鳳堂、1904

小川剣三郎: 稿本日本眼科年表 1929

福島義一: 日本眼科全書1 日本眼科史58、金原出版、1954

中泉行正: 明治前日本医学史4 日本眼科史 261、日本学士院、1964

金岡秀友: 古寺名殺辞典 300、東京堂、1970

愛知県医師会: 愛知県医事風上記 9、1971

野田 昌: 馬島流眼科と明眼院 大治町役場、1976

松原 廣・松原広樹: 眼科風土記269、綜文館、大阪、1986

 

 

 

 

 

      図1 「麻嶋潅頂小鏡一紙」 序

図2  「麻嶋潅頂小鏡一紙」 序のつづき 左ページに系図がみえる

  図3  同本 序文の最後部分と目録の最初部分

  図4  同本  目録のつづき

 

図5  同本  目録の最後部分

 

図6  同本  巻之上  外障門の最初部分

 

  図7  同本  巻之中  中障門の最初部分

 

  図8  同本  巻之下 内障門の最初部分

  斎藤仁男  中泉行信  中泉行史  1993