研医会通信 183号

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2020.7.27

研医会図書館は近現代の眼科医書と東洋医学の古医書を所蔵する図書館です。
この研医会通信では、当館所蔵の古医書をご紹介いたします。

今回は  『眼科辨要』と『西説眼科必読』 です。

『眼科辨要』と『西説眼科必読』

 

 

『眼科辨要』と『西説眼科必読』

 高良斎(1897~1919)がその生涯に行った翻訳は医学各科にわたっているが、眼科関係においてもいろいろある。

 

『喎蘭銀海秘録』 6巻未刊

独逸 蟄篤満著 烏的蘭訳 高良斎重訳

 

『眼科使用』6巻未刊

独逸 蟄篤満著 高良斎重訳

 

『西説眼科必読』4巻

独逸 蟄篤満著 福鳥的蘭訳 高良斎重訳

 

『泰西眼科必読』4巻未刊

高良斎訳

 

『耳眼詳説』 1巻

和蘭 斯昆魯底児著

 

『眼科実地此事須知篇』2巻

著者不明  高良斎訳

 

『船窓余閑』 1巻未刊

原著者不明  高良斎訳

 

『内障説』(内騎針論)1巻

独逸マーグデフネク・ドクトル・ビュッコルン著 蘭人の訳本により高良斎重訳

 

 以上、高於蒐三・高壮吉著『高良斎』、福島義一著『高良斎とその時代』による。

 

 これらの訳本は未刊のものが多いが、『喎蘭銀海秘録』、『西説眼科必読』は西洋眼科学の新知識をシーボルトによって伝授された代表的眼科書といわれている。

 

『眼科辨要』は全1冊、20葉の和紙に漢字、片仮名交じりの和文体で書かれたものである。その末尾には“嘉永辛亥霜月初旬瀉尾、臨水堂蔵"と認められ(図3)、その年代は黒艦が浦賀に来た嘉永6年(1853)より2年ほど前にあたる。

 本書の内容はその目次によってみると、以下の通りである。

 

眼焮腫総括

 眼焮腫

  焮腫所在の殊異

  1.尋常眼焮腫

  2.結膜全部焮腫

  3.激烈眼焮腫

  4.内部焮腫

  外候3件

  1.燥性眼焮腫

  2.湿性眼焮腫

  3.膿性眼焮腫

 單性眼焮腫

 傷冷毒眼焮腫

 走注痛々風眼焮腫

 腺疾眼焮腫

 癥毒眼焮腫

 梅毒眼焮腫

 淋疾毒眼焮腫

 痘毒眼焮腫

 痘後眼焮腫

 悪液眼焮腫

 瞼腺焮腫

 多涙眼

 赤子眼焮腫

 

 これらの目次項目によりその資性(症状)、起因(起原)、治法の順に記述し、訳文中ところどころに “淡按" として訳者高良斎の考えるところを付け加えている。

 

 筆者の所蔵する『眼科辨要』と『西説眼科必読』(4巻、独乙 伊亜 帝篤満原本、和蘭 亜般 福烏篤訳校、 日本 阿波 高淡良斎訳考)、『銀海秘録』(乾坤、和蘭、蒲宇杜著 日本 永章訳)を比較検討すると、『西説眼科必読』の巻1の目次、眼焮腫総括より赤子眼焮腫まで、および『銀海秘録』の乾巻、標目、眼焮腫総括篇より新児眼焮腫篇までの内容がほぼ符合する。しかし、『西説眼科必読』と『眼科辨要』の訳文中には“淡按"の訳考が加えられているが、『銀海秘録』には“淡按"の訳考が省かれている。また、『眼科辨要』の各目次の下に、片仮名の和蘭名と羅甸名が、例えば、「單性眼焮腫 エーンホージゲオークオントステーキンク 蘭 オポタルミアシンプレギス 羅」のごとく原語の名称が付されている。このように『眼科辨要』は『西説眼科必読』の巻1に相当する部分の写本とみることができる。つまり、『眼科辨要』は『亜誤私的而達謨薬局書』、『巳百伊薬性主治書』、『依参扶児屈薬局書』、『私扭亜而多外科薬性書』、『舎電発謨外科書』、『帝篤満外科書』、『布連吉眼科書』、『〇(=くさかんむりに列) 而列内科捷經書』、『福鳥多薬性主治書』などの諸書を引用して成ったとされる『西説眼科必読』と同系の訳本で、その第1巻をもって大尾とし、独立した書名を付けたものと思われ、『西説眼科必読』の異本とも思われる。

 

 

主な参考文献

1)高於蒐三・高壮吉: 高良齋. 1939 

2)福島義一: 高良齋とその時代. 思文閣, 1996 

 

  図1  眼科辨要 表紙

 

   図2  眼科辨要 巻頭

 

  図3  眼科辨要 “淡按” 高良斎:訳考

 

  図4  眼科辨要 巻尾

  

 図5 西説眼科必読 巻頭

  

  図6  銀海秘録 巻頭

 

  斎藤仁男  中泉行信  中泉行史  1998