研医会通信 186号 

研医会トップ 研医会図書館眼科
漢方科交通案内法人情報
 

研医会図書館は近現代の眼科医書と東洋医学の古医書を所蔵する図書館です。
この研医会通信では、当館所蔵の古医書をご紹介いたします。

2020.10.27

今回は 『伊賀国家里流目書』 です。

「伊賀国家里流目書」

 

 

 筆者らは先に家里流眼科について本誌(32: 168~169、41:412~ 413)に記述したが、『眼方秘方傳 他家之流』という書外題のついた写本に所載の「伊賀国家里流目書」を紹介する。

 

 『眼方秘方博 他家之流』は外題の通り伊賀国 家里流、當延流、金蔵坊蒸流および夢想善助流など4家の眼病療治の次第、絵図、薬製秘方を書写相伝したものである。

 

 写本は漢字、片仮名混じりの和文に朱入りのもので、全1冊36葉、こよりで綴られた横長本(18.5×26cm)である。書写年代は明記されていないが、記述の中に“奥田清左衛門、享保十一年四月 日書記畢"と認められているところより、享保11年(1726)以降に作成された写本と思われる。

 

 「伊賀国家里流目書」の記述はこの写本の36葉中9葉を占めているが、内容はおよそ以下の見出しにより記述されている。

前文

彩色絵図入眼病療法

夕ゝレ目ノ薬

承応4年(1655)正月 家里梅了直伝の書

眼目煎薬書

眼病内薬之惣方

洗薬煎楽惣方

ヤミ目之洗薬

薬製剤之事

 前文は以下のような記載から始められている。

「伊賀国家里流目書

夫眼目之病様々多之療治見立事家ニ有り云々…(中略)本医之無心目医者二書ヲ以指南或以絵是相傳之夘他見他言有之間敷者也

天正九載二月吉日       家里

            

 右家里流眼目之療治之書物 御熱心間伊賀家里梅了奥儀秘傳 不書写進之眼病十二ノ目録、食、房、心、風、肺、肝、腎、土、脾、虚中、底之眼目、星、此内ニ在則養生見極薬方療治他流相違之所口傳有り。療治不叶眼目奥二在之也」

 

眼病療治法

食眼之絵、 土肉眼之絵、房眼之絵、心眼之絵、風眼之絵、肺眼之絵、肝眼之絵、腎眼之絵、脾眼之絵、底脾眼之絵、虚眼之絵、星眼之絵。

 

 これらの病態を彩色絵も添えて療法を述べている。例えば房眼之絵の段には、

「目頭目尻ヨリ赤キ大キ筋出枝咲色々二成テ目シブリアキカ子煩ナリ、翳膜出テ目カワクニ貴竜散、右房事過時者虚眼トシルベキ也。貴竜散: 炉眼石、貝子、石膏、 白竜、 白攀、滑石、棲石、牡蠣、龍脳、麝香、眞珠、蓬砂、塩消

コレヲ細末シテ可用」とある。

 

 また、眼目煎薬の部には、

 「疼痛熱涙、翳膜、頭痛、眼痛、 上気シテ目腫、頭痛目赤、白晴腫痛、上気シテ涙出ル、眼目澁、黒脾、赤脾、眼不痛、無光、星出ル眼」

とあり、以下の眼病に対する薬の処方が挙げられ、石膏、寒水石など20数種の薬物製法(拵様)が記述されている。これら薬の処方、拵様はすべて家里秘伝のものとして次のような記載がある。

 

「右此煎薬書并薬種製剤者伊賀国家里梅了秘傳

請他流替所之分口傳申渡者也

承応四載正月吉日」

 

 家里流眼科の施術法の別伝によれば、四方切、八方切、拂切。 鍼大事、鍵鍼大事、肺障、ハギヤウ、コソケヤウ。マクリ切、マクリヤウ、押エ切、ホソ切、切出スヤウ、カケ切、肉切目瞳入レヤウ、水鍼、血取引刀、熱金、温金睫ホリ切、立刺ヌキヤウなどが挙げられているが、家里梅奄の療治略論によれば、四方切、八方切、拂切は家里流眼科の極秘となつている。

 

 一方、家里流は既述の『眼科竜本論』の中で紹介したように、和州(現奈良県)郡山・中興の人とみられる家里三郎兵衛喜定をはじめとする家里一派の人達が、京都、大阪、近畿‐帯、および江戸方面の各地に家里流を名乗り、それぞれに分派をなしたものと思われる。

 

 このように『伊賀国家里流目書』によると、家里流眼科は伊賀国地方に江戸時代以前の天正年間初頭には既に行われていたものと推測され、 この家里流目書はその裏付け史料の1つと考えられる。

 

 家里流眼科の文献として知られているものは以下のものが知られている。

・伊賀国家里眼目一流療治秘方之巻

・伊賀国家里流目書

・梅了先生家伝眼目秘録 承応3年(1654)

・眼療秘伝書(伊賀国家里祐庵円清伝書)

・家里流目薬井灌頂之巻

・家里流目論

・家里一流相伝 熊谷春礼筆? 安永6年(1777)

・家里流書伝集

 

 

 

 

主な参考文献

1)小川剣三郎: 家里流眼科 実眼1. 211, 1918

2)小川剣三郎: 家里伊賀守 実眼1. 480, 555, 1918

3)小川剣三郎: 市原横飲・家里梅慶 実眼1. 555, 1918

4)小川剣三郎: 市原光蓮 実眼1. 555, 1918

5)小川剣三郎: 家里流眼書 実眼4. 196, 1921

6)小川剣三郎: 稿本日本眼科小史. 吐鳳堂. 1904

7)中泉行正: 明治前日本医学史4. 273, 日本学士院, 1964

 

          図1 『眼方秘方傳 他家之流』 表紙

 

   図2 伊賀家里梅了 秘伝書 (図1と同書) 

 

新規 div タグの内容がここに入ります

        図3 家里梅了直伝識 (図1と同書)  

 

   図4  図1同書 絵入り眼病療治法

 

  斎藤仁男  中泉行信  中泉行史  1999