研医会通信 187号 

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2020.11.27

今回は  眼療器具の種々(1) です。

 眼療器具の種々(1)  —江戸時代眼科諸流派の古写本に見る一

 

 

 古来、眼病の治療法には主として薬物療法と手術療法とがある。 中国明代のころに使用された眼の手術器具には針(鍼)、刀、鉤、割、烙(『傳氏眼科審視瑤函』)などがあったようであるが、治療法としては、むしろ手術療法より薬物療法が主であった。

 わが国では眼療器具としてどのようなものが使用されたのであろうか。江戸時代の眼科古写本に記載された眼科諸流派で使用されたであろう眼療器具について、その名称、種類などを調べた。
 わが国では江戸時代以前に『医心方』(984)や『病草紙』(13世紀初頭)など、すでに目の治療を行っている記述や絵図が載っており、手術用器具なども用いられたものと推測されるが、その名称や種類などについてはつまびらかでない。

 南北朝(1337~1392)のころから馬島流などの眼科諸流派が興り、一流一派を競って、その流派それぞれの眼療器具が考案、創作されたものと思われる。しかもその考案、創作は口伝や秘伝による一子相伝の形で行われたといわれている。

 今月と来月の2回にわたり、馬島(麻島)、抽木流など眼科諸流派の古写本の他、『眼目明鑑』、『眼科玉明秘録』などに所載される眼療器具の名称と種類を列挙する。

 

 

 

馬島流眼科器械 柚木流眼科器械 日下玉眼一流眼科器械 「眼科撰要」所載器械図 諏訪竹内家「一子相傳録」
(麻島潅頂小鏡所載, 1783年)     (1826年, 樋口子星撰) 手術道具
1.温金 1.目薬匙 1.タル金 1.温摩銅 1.金ヒカシ針
2.ハサミ 2.羽箒 2.引刀 2.温銅 2.金カケ針
3.切り鎌 3.天眼鏡 3.悪血トリ 3.熱鉄 3.金ゴミトリ針
4.カキアゲ 4.カキ鎌 4.天字金鍼 4.指棒 4.ハサミ
5.切ハサミ 5.掛鉤 5.地字金鍼 5.鼈甲箆 5.銀シャジ
6.蒸シ薬
(蒸シ薬ノ器ニ竹ノ筒ヲハメタモノ)
6.手鋏 6.肉キリ 6.眼輪 6.銀ブンチン
7.目棒(小川剣三郎『稿本日本眼科小史』p.65参照) 7.却老 7.外障鍼 7.羅ノ眼アテ(遮光帯) 7.シンチュウ合皮
  8.焼金 8.内障鍼 8.小手鋏 8.シンチュウ大シャジ
  9.引刀 (小川剣三郎著『稿本日本眼科小史』p.124参照) 9.大眼刀 9.ケヒキ
  10.湯筒   10.鹿茸小手 10.銀メス
  11.鋏   11.三角鍼 11.中ハサミ
  12.眼押ヘ   12.目張(開瞼器) 12.ケヌキ
  13.外障ムキ   13.眼輪(開瞼器) 13.コテ鋏
  14.肉挟   14.眼刀 14.銀温金
  15.ツキバリ   15.両刃水機 15.ヘラ大小
      16.筋切熊手 16.眼刀
      17.鍼 17.鉄ボウ
      (小川剣三郎著『稿本日本眼科小史』) 18.メス多数
        (岩波泰明著「御眼医師竹内新八」p.47 参照)
 
 

図1 博氏眼科審視瑤函 巻4 所載図


 

図2 尾州麻島眼目秘録 所載図


 

図3 眼科玉明秘録 所載図(文政7年写)


 

図4 眼科記聞 所載図

 

図5 柚木流眼科秘録 所載図

 

図6 眼科撰要 所載図


 

  斎藤仁男  中泉行信  中泉行史  1999