2025.4.9
図1 『瘍科秘録』 10冊 (弘化4年)
『瘍科秘録』 本間玄調(棗軒)
松木明知先生より、御著『本間玄調の新研究—華岡流医術の後継者』を研医会図書館にご寄贈いただきました。これまでの華岡流の研究を厳しくふり返られて、徹底的に調べられ、事実に即した新しい発見を述べられています。これまでも精力的に研究書を出されてきて、研医会のホームページでもご紹介していますが、今回もまた「まだまだある」というお声が聞こえてきそうなボリュームと内容です。
そこで、今回はこの本間玄調の『瘍科秘録』をご紹介します。「瘍」は「かさ」とも読み、皮膚にできた異変を治すのが瘍科かと思われますが、現代の皮膚科で扱うものも、癌もここに入れられています。本のところどころには症例の図や、治療器具、包帯の巻き方などの図があります。また竹木で刺した、虫が耳に入った、針や碁石を誤って飲み込んだ、獣にかまれた、虫にかまれた等の治療法も述べ、「食兎中毒」というウサギを食べることで罹患する病についても書かれています。古い医書にはこの「食兎」による病は書いていないが、なぜか文政の頃より多くなったとあり、新しい病気として認識していました。巻九のこの項目の主治法には、葛根加朮烏湯、柴胡桂枝湯、柴胡桂枝乾姜湯、破敵、赤汞丹、遊〇(並のしたにハ)というあまり見慣れない薬が書いてあります。
原南陽、杉田立卿、華岡青洲、シーボルト、高階枳園に学んだなかで、最も影響を受けたのは華岡青洲で、自らを華岡流の後継者と自任していたという証が松木先生の本に示されています。合わせてお読みいただくことをお勧めします。
研医会図書館ホームページ、「情報交換室4 華岡青洲資料一覧」 もご覧ください。
http://ken-i-kai.org/jyohokokansitu/jyouhokoukansitu4hanaokaseishu.html
図2 同本 扉
図3 同本 丹波元堅序文の冒頭
図4 同本 海保漁村の序文冒頭
図5 同本 自序のはじめ
図6 同本 総目のはじめ