研医会通信  2号  2006.7
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『百花詩図考』より

このホームページでは、当館所蔵の古医書をご紹介いたします。初回は啓迪集です。

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休館日:     土日祝日、夏季休業日、年末年始

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啓迪集(1)
   

わが国の医学は.在来医学を除いては、インド、中国医学の影響を強く受けて次第次第に発展してきたが、奈良、平安時代から鎌倉時代頃までは、わが国が一方的に中国より学ぶものが多く、いれば模倣の時代であって、医書などもほとんどが中国や朝鮮伝来のものが使用され、いわゆる模倣医学の時代といっても過言ではない。


 室町時代以降江戸時代の中期にかけては、中国の金、元および明代の医学が入り、医書もその翻刻やそれを基にした著述が行なわれ、ことに明代の医学が田代三喜(1465-1537)らによってとりいれられ、曲直瀬道三(1507-1595)らによって広められてから、わが国の医学は宗教と医学が分離する方向に進み、医術の段階から科学的基知識の上にたって考えられた、いわゆる実証医学へ漸く変ってきたということができる。


 田代三喜らによってもたらされた中国医学というのは主として李東垣、朱丹渓などがとなえたいわゆる李、朱医学であって、これがさらに道三によって受け継がれ、『啓迪集』*1に集大成され、世にひろめられた。

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         図1『啓迪集』策彦の序文未、道三自序慶安2年(1649)刊
 

 

 
 

 

図2道三『切紙』の表紙(和綴服制)

   
 

『啓迪集』(図1すなわち『察証辨治啓迪集』(内題)は正観町天皇の元亀2年(1571)に曲直瀬(一渓)道三によって編述された桃山時代を代表する察証弁治*2の全書で、全8巻よりなり、漢文で書かれた医書である。

巻別に疾病の門を挙げると、

第1巻 中風、傷寒。
第2巻 中寒、中暑、中湿、瘧疾、痢病、泄瀉、?嗽、痰飲、喘急、水腫、脹満、積聚、霍乱、嘔吐。
第3巻 翻胃、頭痛、心痛、腹痛、腰痛、脇痛、脚気、痿證、痛風、痺證、黄疸、消渇、淋病、疝気、血證、衂血、嘔血吐血、咳血痰血、下血、尿血。
第4巻 諸気、諸虚、内傷、勞?、汗、??動悸、健忘、眩暈、秘結、燥、火熱、尿濁、遺精、遺尿失禁。
弟5巻 陰禿*、鬱、心下痞満、アク(げっぷ)逆、諸虫、吐酸、中悪、狂癲、シ(ひきつり)證、痔漏、脱肛、ハン(斑点)疹、損傷、眼目、耳病、鼻病、唇舌、咽喉、牙歯、鬚髪。
第6巻 瘡瘍、破傷風、癩風、救急、老人、老人諸証、大低并扶老全真捷
第7巻 婦人
弟8巻 小児

等の門に分けられている。

 

 

 
図3道三『切紙』表式による説明

 

   『啓迪集』は道三流医術の集成であるといわれ、「軒岐以来百家の書、ことに『局方発揮』(宋彦脩撰)、『玉機微義』(徐彦純撰)、『丹渓纂要』、『医学正傳』(虞摶)等の所説により、岐・黄の問答(黄帝素問の書を指す)を以て医の法とし、臨機応変を以て医の意とし、医、意を以て聖法を用うるを主張するものにして、57則を設けて道三流の要旨としている」(富士川游著『日本医学史』) また、この57則を道三流派の秘訣として1枚の紙に認めて、その門弟に授けたものが道三切紙(図2、図3)といわれるものである。

図4 『玉機微義』表紙 道三がこの本を1冊毎閲覧したことがわかる。
図5 『玉機微義』巻末、道三の書入れ 嘉請9年(1530)市刊
 

 『啓迪集』はその引によるとおよそ64部の書籍を引用していることを示しているが、その主なものには『格致餘論』(李杲撰)、『此事難知薬』(李杲撰)、『脾胃論』(李杲撰)、『蘭室秘蔵』(李杲撰)、『丹渓心法』(方廣撰)、『丹渓纂要』、『医学正傳』(虞搏)、『玉機微義』(徐彦純撰)、『傷寒百問』(朱肱撰)、『医林集要』、『明医雑著』(王綸著)、『袖珍方』、『恵済方』、『医方選要』、『全九集』(月湖)等々があり、特に『医学正傳』(8巻)や『玉機微義』(50巻)などは道三が常に座右にして閲読し、『啓迪集』を編するにあたってもよく参考にしたようである(図4、図5)。

 『啓迪集』の中の眼科はその第5巻に"眼目門"(図6)を設けてのべられているが、その項目をみると『玉機微義』、『原機啓微付録』(薛己著)などのものと大変よく似ている項目もある。

 


 

図6 『啓迪集』眼目門 この本の特徴である表式記述により簡潔に説明されている。

 

 

   
*1 啓迪・・・・・・・・・・・
教え導くこと。道三はこの書を姪や孫を教え導くために著し、ゆえに啓迪集と名づけた、と序の中で語っている
*2 察證辨(弁)治・・・
病の証を察して、治方を弁別する

 

(昭和54年  中泉、中泉、齋藤)

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