研医会通信  208号 

 2022.8.31
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研医会図書館は近現代の眼科医書と東洋医学の古医書を所蔵する図書館です。
この研医会通信では、当館所蔵の古医書をご紹介いたします。

今回は 『医療羅合』と『妙薬博物筌』 です。

 

『医療羅合』と『妙薬博物筌』との比較

 

わが国においては、初めて専門的体裁をした眼科書として元禄2(1689)年に公刊された『眼目明鑑』(杏林奄医生)がある。これに続いて刊行された眼科書に『眼目精要』(藤井見隆)がある(中外医事新報No.1166、臨眼35(3)、(4)参照)。その後、藤井見隆がかかわったとされる着作は数多く伝えられているが、そのうち筆者らの手許にある『医療羅合』(いりょうきぬふるい)と『妙薬博物筌』について紹介する。

 

『医療羅合』には、『医療羅合』(全7巻)、『医療羅合眼目』日、月、星、(『眼目精要』『眼科医療手引草』)、『小児医療羅合』(上。下巻)などがある。この『医療羅合』(全7巻)と『妙薬博物筌』(全7巻)を比較すると以下のとおりである。

 

『医療羅合』

『妙薬博物筌』

弁言 長岡恭齋

序 鳥飼洞齋

序 藤井見隆

凡例

凡例

医療羅合 巻1 目録

いろはにほへと 1 目録

藤井〇求子見隆 纂輯

藤井〇求子見隆 纂輯

長岡恭齋丹堂 校正

長岡恭齋丹堂 校正

(本文)いの部

(本文)いの部

はの部

はの部

にの部

にの部

ほの部

ほの部

への部

への部

との部

との部

医療羅合 巻1(巻尾)

巻1(巻尾なし)

〃    巻2 目録

ちりぬるをわか 2 目録

          (巻尾)

巻2(巻尾なし)

〃       巻3 目録

よたれそつねな 3 目録

          (巻尾)

巻3(巻尾なし)

〃       巻4 目録

らむうゐの於く 4 目録

(巻尾)

巻4(巻尾なし)

医療羅合 巻5 目録

やまけふこ江え 5 目録

(本文末尾)

一疵深く薬底へ入ぎる

には蛇の脱を粉にし付

この部分を欠く

薬に加ふ、 栗もよし

 

医療羅合巻5(巻尾)

巻5(巻尾なし)

〃    巻6 目録

あさきゆめみし 6 目録

〃    巻6(巻尾)

巻6(巻尾なし)

〃    巻7 目録

ゑひもせす 7 目録

            (大尾)

巻7(巻尾なし)

 

文政6年癸末秋

この部分を欠く

心齋橋通博労町角

 

大阪書林 伊丹屋善兵衛

 

 

 

掲出本の書誌事項は次のとおり。

『医療羅合』全7巻7冊、各巻四周単辺匡郭、毎半葉9行、無界、毎行字数不定、漢字平仮名交り和文、版心: 絹飾、巻数、丁数文字入、原表紙、無地、四針袋綴(22 cm×16 cm)、摺題箋簽。

 

『妙薬博物筌』全7巻7冊、各巻四周単辺匡郭、毎半葉9行、無界、毎行字数不定、漢字平仮名交り和文、版心:巻数、丁数文字入、原表紙 桐葉模様地、四針袋綴(22 cm×15.5cm)、摺題簽。

 

以上のように両書の間には序文、外題簽(医療羅合、伊。知…安。恵、妙薬博物筌いろはにはヘと)、表紙および版心などの異なるほかはほとんど差異をみない。

 

次に両書には目に関して以下の項目が記載されている。

はの部

歯を固め目を明にす

ほの部

疱蒼目に入ぬ法

疱盾の後、 目痛むを治す

疱瘡目の薬

疱瘡目へ入たるを治す

との部

雀目の薬 小児疳眼に用てよし

たの部

ただれ日あらひ薬

つの部

突眼の妙薬

突目又は翳障俄かに生ずるを治す

らの部

労証の眼暗を治す

やの部

やみめの薬

めの部

血眼洗い薬

目洗い薬 風眼、やみ目、血眼によし

冷目の薬 但し老眼によし

眼目の内薬 冷目、血のみち眼によし

明眼地黄湯

目の内薬二方

目ヘ物の立ちたるをぬく薬

目ヘ物の入たるを出すこと(智恵海にあり)

突目の薬

目薬 龍脳散 名方

目の薬 秘伝

小児通晴(やぶにらみ)の治方

眼胞腫血滞て疼つよく、その外膿氣ある眼を治す

睡起に眼赤く腫を治す

目俄昏暗なるを治す

爛眼風眼痘瘡の眼に薬

偸針眼の治方

眩量に用ゆべき秘方

 

また、両書に掲げられた凡例には次のごとく述べられている。

「此集は諸家の秘方即効ある者を多年傳受して、これを書寫并に近来見聞する所和漢の妙剤を雑記したる数十巻、蓄んで書画に満り、蠹魚の蝕んこと恐れ、暇レ繙之煩蕪を芟精華を撮み約て一帙とし、庸医童蒙乃徒も了解し易からんため、文辞を不レ荘悉く俚語を以て仮名に誌し、いろは字を用て病門を分類す、閲者其部下に於て治法を求むべし……。」

 

このように両書は同一凡例をもち、纂輯、校正は藤井〇求子見隆、長岡恭齋丹堂とあり、『医療羅合』(全7巻)が享保11(1726)年に、京都四条通り寺町西へ入町、めと木屋勘衛より刊行され、その後、鳥飼洞齋の序を付し書名を『妙薬博物筌』(全7巻)と変えて、文政6(1823)年に大阪心齋橋通博労町角、伊丹屋善兵衛・他より刊行されたものと思われる。ともに和漢の妙剤などを適応症のいろは順に収録した治療全書的なものである。

 

藤井慎蔵は名を政武、字を見隆、以求子、〇求子、以楽子、慎齋と号した。元禄2(1689)年9月20日生まれ、宝暦9(1759)年2月12日、71歳にて没した。本書のほか多くの著作をなし、主なものとして『初学詩文梯航』『錦嚢妙薬秘録』『医療羅合』『小児医療羅合』『眼科医療手引草』『眼目精要』『眼科薬方』『小児医療手引草』『経験医療手引草』『雑症合参難病奇効方彙』『試験切要秘方』『拾玉智恵海』『拾玉新智恵海』『拾玉続智恵海』『世宝秘苑要術』『背紐』『錦嚢智術全書』(百工秘術加入再編)などが知られている(高橋雅夫氏による)。

 

* 〇求子  〇は 已の異体字か

 

 

●主な参考文献

1)小川剣三郎: 稿本日本眼科小史. 吐鳳堂書店、1904

2)小川剣三郎: 眼科医療手引草は眼目精要の改題せるものなり、中外医事新報No.1166、日本医史学会、1930

3)富士川游: 日本医学史. 日新書院、1943

4)福島義一: 日本眼科全書. 巻1. 日本眼科史.金原出版、1954

5)中泉行信・他 :眼目精要・眼科医療手引草と医療羅合.臨眼 35(3)、(4)、1981

6)高橋雅夫(稿): ビューティサイエンス. No.1. 源流社、2003

 

    図1 『医療羅合』 7巻7冊  

 

 

    図2 同本 巻頭の「医療羅合弁言」 

 

   図3 同本 序文の最初

 

   図4 同本  目録の最後と巻之一の最初

  『医療羅合』 「医療羅合弁言」(序文) 全文のpdfはこちら

 

 

   図5 『妙薬博物筌』  7巻7冊

 

   図6 同本 序文の最初

 

   図7  同本  序文の最後と凡例の最初

 

    図8 同本 凡例の最後と目録の最初

 

   

 

 

斎藤、中泉 2005