研医会通信  165号 

 2019.2.15
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研医会図書館は近現代の眼科医書と東洋医学の古医書を所蔵する図書館です。
この研医会通信では、当館所蔵の古医書をご紹介いたします。

今回は 『麻嶋流眼科秘伝書』 です。

『麻嶋流眼科秘伝書』

 

麻嶋流眼科を伝える写本には麻嶋流を冠した表題もあり、内容目次から採った表題もあり、 また片仮名文字で書かれたもの、平仮名文字を使って全文が書かれたものもあり、その種類は様々である。ここにご紹介するものは各冊に異なる表題を付けた、4冊より成る麻嶋流眼科の秘伝書である。

 

さて、麻嶋流眼科の秘伝書といわれる写本は、概してその内容目次に

 

麻嶋灌頂小鏡之巻   眼目養生之次第

七種之内障絵図    薬性井拵へ様

薬使い替へ之事    内薬拵へ様

眼病禁好物之事

 

このような項目を掲げ、 これを1冊にまとめ、弟子から弟子へ次々と書写相伝されてきたと思われる例が多い。

 

掲出のものは、江戸時代中期に書写されたのと思われるが、 全4冊(18.0×11.7cm)よりなり、

 

第1冊(32葉)眼目口伝書

第2冊(19葉)麻嶋濯頂小鏡之巻

第3冊(20葉)眼目養生之次第

第4冊(22葉)諸薬秘伝書

 

等の内容目次を表題に付した相伝書である。

 

これら各冊の内容を抄記すると以下のとおりである。

 

第1冊 眼目口伝書

ここには、眼病12病と本地12神との関係、膜目、血目、風眼、外障、内障、星目、打目、突目、出来物、痘療、さかまつげ、ただれ目等12の眼病、外に月の輪、鳥目等を加えた眼病の治療法を記述している。

 

第2冊 麻嶋灌頂小鏡之巻

眼病と五臓六腑との関係

竜脳等39味の薬種名とその薬能および処方、薬種取替様の事、薬師の巻等が記されている。

第3冊 眼目養生之次第

ここには、藤まけ、簾まけ、杉まけ、うきひ、天火、風眼、爛目、さかまつげ、 どにく、おにく、たいはの星、あまのじゃく、 もかさ目、外障、月の輪、つりまけ、 くぼみ、すまる星、無名眼および7種の内障(黄内障、青内障、血内障、石内障、黒内障、白内障、中障)等について彩色絵入りで治療法を記述している。

第4冊 諸薬秘伝書

この冊には次のような諸薬の処方と用い方について述べている。

麻嶋洗薬、虎謄膏、 目拭拵様の事、 目□痛を治す、虚労の目を治す、小児ちりけの目、外障のかけ薬、於い薬、血を去る洗薬、雪中外障の掛薬、虎肉散、明眼膏、紅梅膏、大明上散、 目の痛を留る内薬、洗薬(水薬)、白蓮膏、大和(ウス色卜云薬)、星目、打目、爛目、熱して腫れ血多くさし痛むによい薬、爛目血目のぬり薬、一番薬、二番葉、三番薬、一切の痛留る薬、眼目下の方目の悪を下、 さいそく薬、一番薬の次第、打目、俄に万の星目の薬、世間にはやる病目の葉、 目むす薬、外障のかけ葉、疱瘡目の薬、小児五疳の目薬、不見とり目の薬、いもの目のさし葉、突目の薬、疳の目薬、紫金膏、同石薬等……

 

以上が本書のあらましの項目であるが、第1冊と第3冊の末尾にはそれぞれ以下のような後書がある。

 

第1冊 「此書物麻嶋之家之秘方也、貴殿不残依熱心爲伝受もの也、假令雖為弟子獧此書物 不可許春也依如件」

第3冊 「此一冊 尾州三本木 麻嶋云在所真寺大坊 参河宝来寺薬師如来一七日之間祈出書物也 是清源之家伝也」

 

これらの後書きの意味から本書は麻嶋若狭守清源の家伝の秘方をある者が某氏から伝受したものと解される。麻嶋流眼科の秘伝書にはいわゆる底本となる正本らしきものが見当らず、『麻嶋灌頂小鏡之巻』『眼目養生之次第』等々、本書と同類の写本が多数みられる。同類の書が、 1冊にまとめられて書写されているところ、本書は4つの表題を付して4冊に分けて綴られたもので、麻嶋流眼科の一端を知ることのできる資料のひとつである。

 

主な参考文献

小川剣三郎:  稿本日本眼科小史 49~113、吐鳳堂書店、東京、1904

福島義― :   日本眼科全書1. 日本眼科史 金原出版、東京、1954

野田 昌:       馬島流眼科と明眼院(大治町史資料編第2集)大治町役場、愛知県、1976

松原 廣・松原廣樹: 眼科風土記 269. 綜文館、1986

愛知県医師会: 愛知県医事風土記9.150、愛知県医師会、 名古屋、1971

 

 

 図1 『麻嶋流眼科秘伝書』 4冊

 

  図2  同書1冊めの 後書

 

  図3  同書 1冊め巻末 文治五年 四月二十日とある。

 

  図4  同書 2冊めの巻頭「麻嶋潅頂小鏡之巻」

 

  図5  同書3冊め 彩色図入りの解説

 

  図6  同書 3冊めの末尾にある後書。

 

  図7  同書 4冊めの巻頭「諸薬秘伝書」

 

  斎藤仁男  中泉行信  中泉行史  1993