2025.7.18
『シーボルト先生 其生涯其功業』
呉秀三:著 大正15年 第二版 吐鳳堂書店
研医会図書館の応接室にある書棚の一番下に、厚さ8センチほどの本があります。「著 三秀呉/生先トルボーシ」右からの横書きです。初版は、明治29年に出された呉秀三先生の『シーボルト先生』でした。中は甲乙の2巻に分かれており、人物や石碑、書簡などの写真も豊富な大冊です。図鑑のような装丁の表紙には金色の箔押しで真ん中に勲章をたくさんつけたシーボルト像(1866年の写真が元と思われます)、周囲はデザイン化された鶴亀、菊、波などの文様で飾られています。
中扉のあとに写真のシーボルト像、次には鳴滝の塾舎の絵があります。鳴滝の絵ではのどかな開けた土地のように見えますが、実際の鳴滝はもっと狭い谷を進んだ左手にあり、「このような小さな道を、日本の科学を作っていった人たちが何人も歩いていたなんて」と意外に思うような、奥まった場所という感じのところです。
シーボルトの伝記の後に、「門人及び交友一。門下として直接教を受けし人々」
として57名の、また「門人及び交友二。面会又は交際せし人々」として25名、「門人及び交友三。長崎の町年寄及び通詞」には14名、「門人及び交友、四。諸侯」には6名の殿様、「門人及び交友、四。再度渡来の時面会して益を求めし人々。」には13名の名があります。シーボルトの交友の広さにも、それを調べ上げた呉秀三先生の熱意にも驚きます。挿図の目次もあり、その数311。これ以外に巻頭や14の図表が収載されています。
なかなか全部を読むのには時間が必要ですが、人物伝の拾い読みをしていても面白く、挿図の肖像画も興味深くご覧になれる書と思います。
図2 同本の扉
図3 同本809ページ 栗本瑞見の画。この書には多くの挿図がある。