お灸のはてな?     漢方内科・形成外科医師   陳 暢宏 のコラム              

このコラムでは、研医会診療所の陳暢宏医師がお灸について書いていきます。

お灸は古くから、庶民の身近な養生法のひとつとして親しまれてきました。脚のだるさや肩こり、冷え性といった不調にも、また健康な方が未病の対策に行うこともあります。

昨今では直接皮膚に触れないタイプのいろいろなお灸グッズがあり、手軽にできるよう工夫がされており、若い女性向けのお灸の本さえありますね。初心者の方も、最初は診療所で経験し、お灸の良さをわかっていただいて、慣れてきたらご自宅でなさるといいでしょう。

 
 

お灸の作用

 中医学の古典(医学入門・鍼灸)には、薬(の効果)が及ばず、鍼(の効果)が到らないものには、お灸が必須だと書いてあります。
 今回はお灸の主要な四つの作用についてご説明いたします。

(一)温経散寒~経絡を温め、寒を散ずる。

 経絡というのは中医学の概念で、気と呼ばれる生命力の働きと、血の通り道のことです。これが冷えると、気血が滞って流れが悪くなってしまいます。中医学ではよく、「不通則痛」(通じざればすなわち痛む)という言葉が使われます。気血が通じないと痛む、逆に通じていれば痛まないということです。
 例えば冬になって冷えると古傷が痛む、という話をよく聞きますね。傷が治るときは、たくさんの繊維組織が接着剤やセメントのように傷を塞ぐために産生され、瘢痕組織を形成します。これが古傷です。それは丈夫ですが硬く、毛細血管が入りこみにくいために、健康な組織よりも血管に乏しく、したがって血流が乏しい組織になってしまいます。これが冷えると血管が収縮し、容易に血行障害を来すので、「不通則痛」の法則通り、痛みが生じるのです。
お灸は温めて冷えを取り除くことで血行障害を改善し、痛みを軽減するのです。

 次回は(二)扶陽固脱について説明します。