2026.6.23
図1 『防長本草学及生物学史』
『防長本草学及び生物学史』 日野巌:著
防長とは、周防の国と長門の国の両国を合わせた言い方で、現在の山口県地域を指す言葉です。この本には著者略歴が付けられており、それを見ると日野巌は明治31年に帝室林野局技師日野吉甫の三男として生まれた人です。東京帝国大学農学部農学科を卒業した後、九州帝国大学助手、宮崎高等学校農林学校講師やその教授となり、京都帝国大学農学部講師嘱託を経て、昭和5年には東京帝国大学で農学博士となっています。フランス・ブラジル・アメリカなどの海外での研究も経験し、オックスフォードやアムステルダムでの学会へ日本代表として参加しています。太平洋戦争中はクアラルンプール博物館の館長もしていて、植物病理学に関する論文を多く書いています。
序には、上野益三博士の日本博物学史、湯浅明博士の日本植物学史、篠遠喜人博士の日本細胞学史、本人の植物病学発達史、上田三平氏の日本薬園史のほか、生物学史としてまとまったものは公にされておらず、ましてや地方の生物学史についてはほとんど見られない状況なので、自ら筆を執ったという経緯が書かれています。
目次を見ると、「魏志隋書の記事」に始まり、「毛利藩時代の本草研究」「明治中期以後における山口県の生物に関する研究」と、古代から現代にいたるまでの記事が並んでいます。毛利藩時代の本草学者とその著作も30名ほどの人物が紹介され、山口県の小中学校での教育についても述べられ、明治の生物学教で使われた動物が描かれた教科書の写真も載せられています。
発行は日野巌先生還暦記念会。限定850部のうち、研医会図書館には「ニ五七」の手書き番号の入った本があります。
図2 同本 口絵より
図3 同本 口絵より