研医会通信  254 号 

 2026.7.21

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研医会図書館は近現代の眼科医書と医学関連の古い書物を所蔵する図書館です。
この研医会通信では、当館所蔵の資料をご紹介いたします。

今回は 『東坡詩』(王状元集諸家注分類東坡先生詩巻十三)です。    

 

    図1 『東坡詩』 表紙

 

『東坡詩』(王状元集諸家注分類東坡先生詩巻十三)

 

 有名な中国の詩人・蘇東坡の詩集の端本です。当館にはこの1冊しかありません。とはいえ、この書籍にはさまれていたカードには「東坡詩 巻之十三, 十四.一冊.経典以外ノ版本ハ 南北朝頃ニハ尠ナク珍重品ノ一ツデアル.此書ハ 五山版二シテ、足利尊氏時代ノ版本ノ一ツデアル。」とあり、貴重な書物であると分かります。

 

 表紙は褪せてはいるものの丹表紙の朱が残っており、本文もくっきりとした文字で詩を書き、双行で注釈を入れている本です。巻頭は、「王状元集諸家注分類東坡先生詩巻十三」「器用 詩十首」とあり、器物の詩がまとめられています。廬陵須渓劉艮(まだれ+艮)翁批点、と書かれています。廬陵は今の江西省吉安の古い名前、須渓という号の劉艮翁という学者が注釈を付けているということです。この(まだれ+艮)は「辰」の異体字であるらしく、九州大学学術情報リポジトリには、「劉辰翁の評点活動と元朝初期の文学」という奥野慎太郎氏の論文*が見つかります。

https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/12839/p076.pdf

 

この論文に依れば劉辰翁は、江西という優れた文学を生み出してきた土地にあって、「欠くべからざる重要人物であった」といいます。劉辰翁の名前は正史には見えないものの、その評点は詩の深い部分まで読み取り、そうした解釈は朝鮮や日本へも広がっていったと述べています。

 

さて最初のページの詩は「地炉」。地面に設けた炉、囲炉裏や火鉢のことを指す言葉です。

細聲蚯蚓發銀瓶
擁褐橫眠天未明
衰鬢鑷殘欹雪領
壯心降盡倒風旌
自稱丹竈錙銖火
倦聽山城長短更
聞道床頭惟竹几
夫人應不解卿卿

 

この詩の本文の間に、小さな文字の評注が入っていますが、それぞれの注釈の出典を括弧に入れて表しています。

 

日本でも人気のある蘇東坡の詩集、ご紹介する本は全ページにわたって朱筆が入れられており、熱心に読んだ人がいたことを伝えています。巻頭の空白ページには手書きで目次があり、(第十三)器用、燈燭、食物、酒、茶、獣、虫、魚、竹、木 (第十四)花、菜、菌蕈 と書かれています。身近な題材の巻ですね。

 

 

               図2  同本 表紙裏

 

               図3  同本 巻頭と添え紙

 

 

               図4  同本  酒の最後と茶の最初部分