研医会通信  149号 

 

 2017.11.17
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研医会図書館は近現代の眼科医書と東洋医学の古医書を所蔵する図書館です。
この研医会通信では、当館所蔵の古医書をご紹介いたします。

今回は 『和蘭眼科新書 』 その2 です。

『和蘭眼科新書』 その2  

 この『泰西眼科全書』に附された「新訳泰西眼病方序説」および「餘録」(「解悶雑記」)(これらは別に大槻玄沢手記本として故山賀勇氏により昭和39年5月、静嘉堂文庫にて発見された) にはプレンク眼科書のオランダ語訳から『泰西眼科全書』に至る、いわばプレンク眼科書の蘭訳本の輸入および翻訳事情がこと細かに記述されている。

 さて、『泰西眼科全書』は寛政11年(1799)の春に宇田川玄眞により、カナ交りの日本文に翻訳されたのであるが、訳文は誤りも多く、完全な訳ではなかつたようである。そこでたまたま漢蘭の眼科を修めた杉田立卿(1786~1845)がプレンク眼科書の翻訳を父杉田玄白より命ぜられ、この『泰西眼科全書』を全面増訂した。

 立卿は『泰西眼科全書』をカナ交りの和文体から全文漢文体に書き改め、(父杉田玄白の影響で『解体新書』の文体、装訂等同調させたものか)自試の眼球解剖を画家石川大浪(1766~1817)に描かせ、その彩色略図11箇を図解とともに載せ、杉田勤(紫石、1763~1833) の序、大槻茂質(磐水、1757~1827)の跋を得て『和蘭眼科新書』の書名をつけて、文化12年(1815)乙亥季春天眞棲蔵版にて、江戸須原屋茂兵衛、同善五郎書肆より発兌した。

 『和蘭眼科新書』は黄色表紙、和綴、全5巻(5冊)、本版(260×17.3cm)、四周単辺、有界、毎半葉10行、毎行22字詰、各冊およそ30数葉よりなるが、内容は以下の総目にみる如く『泰西眼科全書』の標目とほとんど同様で、各眼病については病因、類證、治法の順に記述されている。また、文中、「不路乙斯日」と註が添えられているが、 これはもともとプレンクのラテン語原著に脚註として記載されていたもので、プロイス自身が加えた説明のみではないようである。(山賀勇氏)

 

和蘭眼科新書 総目録 

巻之一

第一   眉病篇 眉睫落毛 眉睫生虱 眉創

第二   睫毛病篇 睫毛内刺 重睫

第三   眼瞼病篇 眼瞼閉著 瞼著眼球 眼瞼焮腫 眼瞼蓄水腫 眼瞼空気腫 眼瞼青斑 眼瞼糊瘤 眼瞼肉瘤 眼瞼固結腫 眼瞼癌 眼瞼疫毒腫 眼瞼麥粒腫 雹腫 水泡稗腫 桑椹腫 疣 渋刺 上瞼低乖 兎眼 外反内反 疥癬 眼縁赤爛 瞼縁〇(にくづきに乖)硬創 瘻 破裂 瞬動 牽急 掻痒

巻之二

第四   涙管病篇 眼目乾燥 涙出不正 眼眵 涙嚢蓄水腫 大眥腫瘍 大眥潰瘍 涙管瘻 大眥瘜肉 涙阜毀損 眼眥爛蝕 大眥汚穢 帯血涙出

第五   白膜病篇 焮腫眼 疼痛眼 脈腫 血斑 膿疱 水疱 瘖〇(やまいだれの中に田が3つ) 顆肉 疫毒腫、潰瘍 砂塵入眼 巻之三

第六   角膜病篇 角膜曇暗 汚點 翅翳 葡萄腫 膿瘍 潰瘍 瘻創 皺縮 膿疱 水疱 肉粒

第七   眼球病篇 眼球減耗 牛眼 眼球突出 眼球癌 眼球緊急 眼球〇(にくづきに閨)動 剛膜創 眼球脱失 眼目過多

第八   蒲桃膜病篇 瞳孔潤大 瞳孔収小 瞳孔縮閉 蒲桃膜附著 蒲桃膜突出 蒲桃膜創 瞳孔変形 瞳孔異常 瞳孔不定 瞳孔不動 巻之四

第九   水様液病篇 水腫眼 膿眼 血眼 乳眼 水様液渾濁 水様液漏泄

第十   水晶液病篇 内翳眼 水晶液突出

第十一   硝子液病篇 緑眼 硝子液烊解 硝子液突出

巻之五

第十二   網膜病篇 羞明眼 黒障眼 強過眼 乏弱眼 昼盲眼 晩盲眼 近視眼 遠視眼 半形眼 黒貼眼 乖羅眼 隔霧眼 不員眼 異色眼 火屑眼 斜視眼 斜動眼 雨形眼

通計118症 (次号につづく)

 

  

  

 

      図8  『和蘭眼科新書』  杉田立卿: 訳述

    文化12年(1815) 刊

 

      図9  図1同書収載 眼球解剖図 眼球は貝殻に入っている。

 

  

 

       図10  『眼科新書』扉 

 

 

       図11  図10同書 大槻玄沢序文 

 

 

      図12  図10同書 大槻玄沢序文のつづき

 

      図 13  図10同書  大槻の識と杉田立卿序文の最初

 

     図 13   図10同書   杉田立卿序文

 

  

   図14  図10同書 杉田立卿序文つづき

 


   図15  図10同書 杉田立卿序文の識と凡例の最初部分。

 

 

 

   図16    図10同書収載 眼球解剖図 眼球はカップに入っている。

 

 

 

中泉、中泉、斎藤 1990