図13 『眼科新書附録』 表紙
図14 『眼科新書附録』 扉 松田就将卿輯録
文化12年（1815） 刊
本書はこのように、文化12年の春正月に初めて刊されたが、次いで同年本書は眼球解剖図の一部を修正して、書名を『眼科新書』と改めて、浪華書痒群玉堂蔵版にて発行された。
この『和蘭眼科新書』と『眼科新書』の両書に掲げられた眼球解剖図を比較すると、11個の図の中、第10図.第11図に修正が加えられている。即ち、第10図の図説で、前者において“T毛様線、 自硝子液透見"が後者では“T角膜"とあり、第11図において前者には図番号がなく後者にはある。また、同図の水晶液・硝子液をもる器が前者の方は貝殻、後者の図ではガラス器になっている。そして図説では前者の方に“丙蒲桃膜"後者には“丙毛様線 自 蒲桃膜所剥離者"とある。本書の本文は全12篇よりなっているが、『眼科新書』の第11篇が第12篇、第12篇が第13篇に誤摺になっている外はこの両書の間にはほとんど相違が認められないようである。
『和蘭眼科新書』並びに『眼科新書』中の治法には薬物の処方が記載されているが、その附録1巻(薬法製煉剤部)が松田芹斎輯録にて文化13年(1816)刊行された。
本書の内容については既述の目録にみられる如く、外眼病、眼球病等合せて118症の眼疾患を挙げているが、眼球脱失の項においては儀眼を用いてその不具を隠蔽する外なし、 として既に儀眼の用法を述べ、 また、水晶液病の段においては、内翳眼即ち内障(ソコヒ) について、内翳区別を所在、軟硬、色体、大小、全熟、不熟、新旧、単兼起原の8項に分けて論述し、ダヒール(Ｊ Daviel)の手術式(1745)療具などを詳述している。
このように本書は、曽て元禄2年(1689)、 日本語で書かれ、 日本で最初に刊行された『眼目明鑑』が中国明代の眼科をわが国に導入したように、18世紀後半のより科学的基礎の上に培われた西洋眼科学をわが国ヘ伝えた翻訳刊本の第1書として日本眼科史上特筆に値する意義深い眼科書である。
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