研医会通信  216号 

 2023.4.28
研医会トップ 研医会図書館眼科
漢方科交通案内法人情報
 

 

研医会図書館は近現代の眼科医書と東洋医学の古医書を所蔵する図書館です。
この研医会通信では、当館所蔵の古医書をご紹介いたします。

今回は 『幼学食物能毒』にみられる目によい食材 です。

 『幼学食物能毒』にみられる目によい食材

「古き医書に見えたり、人長寿を保たんと思わば先第一に食事をつゝしむにあり。古人日廉食益有り、美食損有り。やまひは口より入るとおもひ、朝夕の食物能毒をわきまふべし。食療のたっとき事知らずんばあるべからず」(序文より)

 

ここに紹介する『幼学食物能毒』は、『神農本草』『時珍本草』『大和本草』『食物本草』『六八本草』『日用食性』『和漢三才図絵』などのほか、古今能毒を著した書が沢山あるが、 これらの書籍はみな漢字で書かれて幼童に理解し難いので、数十家の説に著者の考えも加えて食物258種の能毒を、和文を以て簡潔に記述したものである。目に関係する食物能毒について以下の如く記されている。

 

本書は万年舎亀麿著、江戸・文会堂。嘉永7年刊。四周単辺匡郭、無界、毎半葉11行、毎行字数不定、漢字平仮名交り、和文、全22葉1冊(22.8cm×15.7cm)、四針和綴、よりなる。

 

胡麻(ごま)

氣力をまし耳目をあきらかにし、五ざうをやしなひ、濕氣頭風をおひすぢ不祢をかたくして、老て志らがにならず。百病おのづからさる。つねにくうて害なし。はらみ女にいむ。くすりには黒き胡麻よし。又痔のやまひによし。

 

薯預(やまのいも)

心氣ふそくをおぎなひ、腎をまし、寒熱の邪氣をのぞき、耳目をあきらかにし、陰をつよくす。また、腰のいたみをとめる。

 

単薢(ところ)

風寒、濕氣、悪瘡の祢つをさり、すぢほねをつよくし、精をまし、目をあきらかにし、脊腰のいたむによし。病後又脾胃のよはき人おほくくうべからず。

 

芥子(からし)

うちをあたため、寒をちらし、たん、せきによし。ようてうの悪血をちらし、 目と耳をあきらかにし、一切の志やきをさる。うなぎと同食をいむ

 

甜瓜(からすうり)

祢つをさり、かはきをとめ、小便をつうじ、暑氣をけす。病後、又目のあしきにいむ。おほくくへば濕瘡を生ず。

 

蕃椒(とうがらし)

食つかへを治し、寒濕をおひ、食をすゝめ、おほくくへば目をくらまし、血をやぶる。はらみ女にいむ。

 

鳥芋(くはい)

うちをあたため、食をけし、風毒をさる。む祢はらの祢つをさり、耳と目をあきらかにし、黒病下血、婦人のなが血、志ら血によし。腎をやぶるといふはあやまり也。おほくくうべからず。

 

榧子(かや)

氣血をめぐらし、 目をあきらかにし、悪毒をさる。せきをとめ、陽をたすく、むし一切によし。痔のやまひにつねにくうてよし。鳥の肉と同食をいむ。

 

椒紅(さんせう)

うちをあたゝめ、せきをとめ、 りうゐん志しく志よくのとゞこほり、 くだりはら、水腫、 うたんによし。又、腰ひざをあたゝめ、血をまし、乳をただし、寒をちらし、志つをのぞく。目をあきらかになし、はやりやまひの家にゆくときかみて鼻にぬりてよし。口あかざるは毒有り。

 

覆盆子(いちご)

うちをあたゝめ、ちからをまし、 目をあきらかにし、腎精大ひにます。女子これをくへば子あり。虚をおぎなう。小べんのしげきをとめる。

 

焼酒(しょうちゅう)

志やく つかへ はら ひへて いたむによし。小便をつうじ、大便をかたくす。目のはれいたむをあらうてよし。おほくのめば胃をやぶる。生姜、にんにくと同食すれば痔濕を病む。

 

食塩(しお)

むねのやまひをのぞき、胃中の祢つをさる。目をあらひて、夜小字を見る。おほくくへば肺をやぶり、又、人のいろをうしなひ、すぢとちからを損ず。

 

鱓魚(やつめうなぎ)

うちをおぎなひ血をます。今眼病にもちゆ。格別黒きは毒あり。格別大ひなるも毒あり。

 

蛤悧(はまくり)

胃の氣をひらき、五ぞうをうるほし、かはきをとめ、酒毒をけし、祢つをさり、 目をあきらかにし、志つをのぞき、婦人血のとどこほるによし。

 

鰒(あわび)

せいきをまし、目をあきらかにし、身をかろくし、〇(やまいだれの中に「林」)病ぶらぶらとしたるやまひによし。

 

田〇(たにし)

かはきをとめ、腹中の祢つをさり、かっけ、 うだん水腫りん病によし。目あかくいたみ、小便あかくしぶるなどによし。又、さけのよひをさます。そばからしと同食をいむ。

 

蜆(しじめ*)*ママ

胃をひらき、五ざうをうるほし、小べんをつうじ志つをのぞく。目をあきらかにし、かはきをとめ、氣をまし、乳をたゞす。かっけによし。脾胃にはくひゑ志やうの人おほくくうべからず。

 

鳩(はと)

腎をおぎなひ、目をあきらかになし、氣をます。虚損の人によし。又、 もろもろの腫物を治す。 くすりのむ人くうべからず。

 

慈鳥(からす)

虚をおぎなひ、氣をたすけ、せきをとめ、ねつをさる。又、目のくすりとなる。

 

かように食物にはそれぞれ能毒があり、人の性質により嗜なもの嫌いなものがあって能毒は同じものはない。食物はすべて、ある場合には薬になることもあり、また時として害毒になることもあるので、食するものすべて食物能毒をよくよくわきまへるように心がけねばならない、ということである。

 

 

■主な参考文献

1)和歌食物本草. 巻上・下.  1630

2)食物和解大

成. 巻上・中・下. 1698

 

 

                                    

図1 『幼学食物能毒』表紙

 

 

 

 

 

                                            図2 図1同書の扉 

 

 

 

 

 

                                     図3 図1同書 序言

 

 

 

 

 

                                         図4 序言のつづき1

 

 

 

 

 

                                    図5 図4同書の序言つづきと目録の最初                                    

 

 

 

 

 

           図6 目録のつづき

 

                

 

 

 

 

斎藤、中泉、林 2007